クールな社長の溺甘プロポーズ
大倉さんがあんな目立つところで変なことを言うから、すっかり話が広まっているじゃない。
今日1日、私が何度嘘をつき顔を引きつらせたことか!
これであとから『やっぱり結婚しません』なんて言えないし……でも結婚する気もないし。
あぁ、これからどうすればいいのやら。
「はぁ、お先に失礼します……」
今日はもう、残って仕事を片付けられる体力もない。
そんな思いから力なく言ってバッグを手に席を立つと、他の社員からの「お疲れ」という声に送り出された。
もうやってられない、今日はひとり飲んで帰る!
ビールに焼き鳥、たこわさ。焼酎もロックでいってやる。
明日も平日で仕事はあるけれど、飲まずにはいられない!ヤケ酒だ!
お気に入りの居酒屋のメニューを思い浮かべながらエレベーターに乗り込む。そしてあっという間に1階に着くと、開いたドアからロビーに出た。
「お疲れ」
ところが、そんな私を出迎えたのは今朝と同じ仏頂面。
さも当然という顔で待っていた大倉さんに、私は思わず手にしていたバッグをドサっと床に落としてしまった。
「バッグ落としたぞ、ほら」
「あ……すみません、じゃなくて!!」
すかさずバッグを拾ってくれる彼に、我に返った私はそれを奪うように受け取った。