クールな社長の溺甘プロポーズ
子供の頃、私が誕生日にほしいってダダをこねて、大きな水槽と熱帯魚を数匹買ってもらったんだよね。
その魚がかわいくて、大好きで、とても大切に育てていた。
私が高校生になるころには皆死んでしまい、以来魚を飼うことは出来ていないけれど。
そんなことを思い返し、懐かしさと、やっぱり魚が好きだという気持ちを思い出す。
「満足してもらえたみたいだな」
そんな中、大倉さんからかけられた言葉に私ははっと我に返った。
そうだ、私の目的は店を気に入らないことを理由に結婚話を断ることだった。
……けれど、それは『不満だったら』の話。
私が不満に感じていない、それどころか寧ろ喜んでいるということは顔を見れば明らかだったのだろう。
大倉さんは自信ありげにふっと笑う。
「ってことは、結婚の話はまだ継続だな」
「ま、まだ!いくら内装がよくても食事が口に合わなければ……」
話していると、先ほど案内してくれた店員さんが早速グラスをふたつ運んできた。
「失礼いたします。お飲物をお持ちいたしました」
「え?飲み物はまだ……」
「ご予約の際、大倉さまから『彼女のイメージに合わせてオリジナルカクテルを作ってほしい』とご要望をいただきまして。おうかがいした通りのイメージから、お作りいたしました」
店員さんがそっと私の前に置いたグラスには、ミントグリーンと白が混じった、かわいらしいカクテルが注がれている。
「私の、イメージ……?」
驚きながらも小さくひと口飲んでみる。
するとミントの少しの苦味と爽やかな香りが広がる中に、ほんのりとした甘さがあり、後味のよさを感じさせた。
「おいしい……」
「ありがとうございます。『気が強くサバサバしている中にかわいらしさがある』というイメージでしたので。ミントリキュールとホワイトカカオをミックスした中に生クリームを入れてみました」
店員さんはそうにこにこと説明してくれると、「お食事のご注文がお決まりになりましたらお呼びください」と個室を後にした。