クールな社長の溺甘プロポーズ
「そりゃあ、私だって……無神経だったかもとか、思う」
からかわれたことに対してふてくされる気持ちと、素直に言うことに対して少し照れくされたような気持ち。
それらを上手く表現できず、ぼそぼそとつぶやく私に、大倉さんは前を見たままこちらへ手を伸ばす。
そして、まるで子供をなだめるかのように優しく頭を撫でた。
「大丈夫だ。星乃の話なら、どんなことでも聞きたいよ」
大きな手、穏やかな声。
それらに胸はドキ、と音を立てて、自分でもときめいているとわかった。
……悔しい。
相変わらず、彼のペースに巻き込まれてる。
それから数十分車を走らせ、やってきたのは横浜市内の大きなホール会場。
アパレル関係と思わしき人々でにぎわうロビーを抜けて、ショー会場であるホールへと足を踏み入れた。
会場内は、ステージの真ん中からホール中央へ伸びたランウェイを囲むような形でパイプ椅子が並んでいる。
座席はほぼ満席状態で埋まっており、おまけに薄暗く足元が不安定な会場内。
つまづいたりぶつからないよう気をつけなければと座席へと向かう。
「星乃」
そんな中、手のひらがひとつ目の前にすっと差し出される。
それは先日と同じ、大倉さんの頼もしい手だった。
「暗いから気をつけろよ」
そう言って私の手を取ると、エスコートするように座席と座席の間を抜けていく。
……なんでいつも、そうやってタイミングがいいんだろう。
この前も、今も、欲しい時に差し伸べてくれる。その手が、嬉しい。