0.0000034%の奇跡



「あ、いえ…」とさっきのマイクを通してじゃなく、近くで聞く心地良い声にまだ魔法が解けない情けない僕。
再び目が合ったら頭のてっぺんまで火照ってく。



「私も丁度、外の空気が吸いたくなってたところなんです」と微笑む君。
つられて僕も笑って「槙田智也(まきたともや)です」と自己紹介した。



時に人は取り返しのつかない事を起こしてしまう。
それが吉と出るか凶と出るかはその人次第なんだと思う。
目の前で優しく笑う君に思わず僕は言ってしまっていた。
火照りきった体は言うことを聞かない。
止めようがなかったんだ。



「もう少し一緒に居ていいですか?あなたのこと、もっと知りたいです……。」



もう恥ずかしいとか言ってられなくて、心の声がついて出たみたいに口からこぼれ落ちていく。
初対面でこんなこと、引かれたらおしまいなのに。
それでも初めて抱くこの感情に突き動かされる僕。



一瞬面食らった君は恥ずかしそうに笑ってこう言ったんだ。







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