0.0000034%の奇跡
「あ、こんなにベラベラ喋ったら伊藤先生に怒られちゃう」
「ハハハ、大丈夫だと思いますよ?僕は信じてますので」
そんなのいちいち気にしてたらキリがない。
早く明日になって芹を抱きしめるだけなんだ。
「でもその神崎って人、しつこいって有名なんですよね〜」
やめて、僕の決意をこれ以上崩さないで。
「伊藤先生、たま〜に隙があるし」
そんなはずはない。
「例え相手に恋人が居ても狙った獲物は必ず落とすって人で…」
ハサミを持つ手が止まる。
「あの、もしかして僕を試してます?」
単刀直入に聞いたらニッコリ笑って
「バレちゃいました?」って。
この人も小悪魔だ………
「でもしつこいっていうのは本当ですよ?まぁ、伊藤先生は完全に相手にしてないみたいですけど」
「教えていただいてありがとうございます」
「今頃強引に誘われてたりして……明日は2日目なんで別に学会に出席しなくてもいいだろうし……」
あの、めちゃくちゃ悪気があって言ってますよね?
上手く交わしながらカラーリングに移る。
「すみません、変な話して」
「いいえ、気にしないでください」
新色カラーに染まると気に入ってくれたみたいでトリートメントも追加してくれた。
「トリートメントはサービスです」と言ったら謙遜してたけど「じゃあ次もまた来てください」と笑顔で見送る。