ぎゅっと、隣で…… 
 そうこうしているうちに、祭りの当日がやってきた。

 朝、まだ日が昇らないうちから、花火が上がり、大三国の火薬詰めが始まった。

 皆、黒の法被を着て、いつもより活気だった勢いに、優一も興奮していた。


 午後になると、三国を大型トラックの荷台に乗せ、地区を回る。

 トラックの荷台に、南朋は男達と一緒に乗せられていた。

 酒もしっかり飲んでいるようだ。


 トラックを下りては挨拶し、又トラックに乗り次の場所へ移動する。

 男達は酔いも回り、南朋と同じトラックに乗りたくて、座席の取り合いに必死だ。



 最後、神社に着くと酔っぱらった南朋がトラックから降りるのに手間取っていた。


 優一はトラックに近づき、南朋に手を差し出した。

 何の迷いもなく、ただ、南朋の手を取りたかった。


 それが、何を意味するのか、優一は気付いていたが、口にする事は出来なかった。


 「優一兄ちゃん……」

  南朋はそう言うと、優一の手を取った。


 だが、南朋は切なそうな目を向け、祭りの輪の中へ戻って行った。


 やはり、南朋にとって自分の存在が、小さいものでしかないと思った。


 暗くなると空一面に花火が上がり出した。


 益々祭りは勢いを増す。三国の火の子の落ちる下をきおい始める。

 熱さなど物ともせず火を浴びた。

 見失った南朋が、秀二と肩を組みきおう姿が目に入った。

 
 大三国の激しい爆音と共に祭りは終わった。
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