ぎゅっと、隣で…… 
突然、立ち上がった優一の拳が秀二の頬へ向かって飛んだ。

慌てて、周りにいた男達が優一を押さえつけた。


「なんだよ! いきなり!」

殴り返そうとする秀二を、又、別の男達が押さえた。


「……」

優一は何も言わなかった。


ただ、腹の底から秀二への怒りをどうする事もできない。


 もう、子供の頃のような悔しい思いはしたくない。

 今度こそ、南朋を守りたいと心の底から思った。


 もっと、早く気付くべきだった。


「お前まさか…… 彼女の事……」

 秀二が、押さえ付けていた男達を払いのけた。


「……」

 優一は黙ったままだ。


「だったら、お前が守れば良かったじゃないか! こんな酔っぱらった男達の中で、俺は南朋に触れようとする奴らの手が嫌だった。俺は俺のやり方で南朋を守っただけだ! 何もしないで遠巻きに見ていたお前に殴られる覚えは無いんだよ!」


 今度は秀二の拳が、優一の頬をなぐった。

 周りにいた男達が慌てて二人を引き離した。


「そうだよ…… 俺は何も出来ない情けない男だよ…… だけど、もう二度と、彼女に近づかないでくれ……」

 優一は、押さえる男達の手をはらうと出口へと向かった。



「そんなんで、お前、女を守れんのかよ!」

 酔いが回っているせいか、殴られた苛立ちか、それとも、南朋を本気で思ってなのか、秀二は治まりが付かないようで、優一の背中に向かって声をあげた。


「もう、南朋に近づくな!」

 優一は振り向き、秀二を睨むと、宴会場を出た。


 周りの目も、宴会の雰囲気を壊した事も、今はどうでも良かった。
 

 秀二への苛立ちだけじゃない、自分自身への苛立ちの方がはるかに大きかった。



「兄ちゃん!」

 和希が心配そうに後を追い掛けてきた。


「南朋ちゃん探してくる…… すまん…… 後頼むわ」

 そう言って、手を上げると、優一は迷いなく走り出した。



「後頼むって…… マジかよ……」


 和希は眉間に皺を寄せ、慌てて走って行く秀二の姿に、口元を緩ませながら小さくため息を着いた。

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