きみだけに、この歌を歌うよ
九条くんは「うん」とだけ言うと、階段をのぼりはじめた私のあとをなにも話さずについてくる。
なんだか……。
私とすれ違う生徒の視線が痛い。
女子の目が怖い。
なんで琴野菜々が、九条くんのとなりを歩いてるの⁉
あんな地味なやつと九条くんって仲いいの⁉
やっぱり付き合ってるって噂は本当なの!?
そんなことを思ってそうな訝しげな視線が、ざくざくと横顔や背中につき刺さってくる。
なんだか嫌な感じだ…。