きみだけに、この歌を歌うよ
「あはは……バレた?だってあまりにも上手だったからつい…」
「だからって撮るなよな!恥ずいわ!」
「ごめんごめん。後で消しとくから。ねぇ、謝るからとりあえず私のスマホ返して?」
「えー、どうしようかなぁ~。また盗撮しそうだしな~」
「もうしないってばぁ。返してくれないなら、むりやり取っちゃうよ?」
「へぇ。やれるもんならやってみな?」
九条くんの左手からスマホを奪い返そうと、手を伸ばしたり腕を掴んだりして必死に奮闘していると。
杏里ちゃんがとつぜん、大きな声で笑いはじめた。