きみだけに、この歌を歌うよ
「ふぅん。そっか」
九条くんはやっぱり、車を眺めながら頷くだけだった。
相変わらずのクールな反応。
だけど、嫌な気はしなかった。
「やっぱり辛いし、悲しいけど……。愁のとなりにはもう私の幸せはなさそうだなって思ったから」
「菜々がそう思ったなら、そうなんだろうな」
「本当にありがとうね、九条くん。こうして前を向いて歩けるようになったのは、九条くんのおかげだよっ!」
目を逸らしたりせずに愁とちゃんと向き合えたのは、九条くんがキッカケを与えてくれたんだもの。
勇気を与えてくれたから、私は今こうして笑っていられるんだ。