きみだけに、この歌を歌うよ
「おい、本間!九条が反応に困ってんじゃん。もうそのへんにしといてやれよ」
優乃ちゃんのお願いお願い、の声を聞いた愁が後ろの席から声をあげた。
反射的に後ろを振り返ると、愁と視線が絡み合った。
「菜々は?行くの?」
「えっ?」
話しかけられたのは、海でキスをされて以来のことだ。
「花火大会だよ。……って、行くもなにも家から見えるのか」
「あ、うん……そうだね!」
愁が軽快に笑うから、これまで目も合わせていなかったことも忘れて私も笑った。
「ちょっと愁くん〜、そのへんにしといてやれってどういう意味よぉ?」
優乃ちゃんが私と愁の会話に割り込んできたから、そこで会話は終わってしまった。