きみだけに、この歌を歌うよ
九条くん、あれからリハビリは続けているのかな。
高音はでるようになったのかな。
浜辺にはもうまったく来てないけど、どこか違う練習場所をみつけたのかな。
いろいろと聞きたいことはあるけれど、花火大会の日以来会ってないからなにも聞けてない。
九条くんの顔を思い浮かべると、そのたびにあの言葉が蘇ってくる。
『菜々のために歌うつもりだったから』
そうするとたちまち、全身がかあっと熱くなってくる。
「ああもうダメダメっ、眠れなくなっちゃう!明日は早起きして早くアウトレットモールに行って、九条くんの顔がいちばんよく見える場所をキープしにいくんだからぁっ」
喉元までガバッとタオルケットに身を包んだ私は、テーブルランプを消して目を瞑った。