きみだけに、この歌を歌うよ
「それではさっそく歌ってもらいましょう。お願いします!」
九条くんがギターの弦を、軽快に弾いた。
途端に、あちこちからあがっていた黄色い声援がピタリと止んだ。
「なにかあった?いつもより暗い顔、泣きそうな顔してらしくないね?僕に話してよ、ちょっとは胸のつかえとれるかも?」
スタンドマイクを通して、九条くんの優しい歌声が会場いったいを包み込む。
私の大好きな九条くんの歌声だ。
1ヶ月前は話すことですら辛そうなほど掠れていた声が、もうすっかり元通りになっていて…。
九条くんは、この1ヶ月間たくさんリハビリをがんばったんだ。
がんばって乗り越えたんだねって思うと、涙が溢れてくる。