神様修行はじめます! 其の五のその後
 彼は神の一族のためを思い、命を賭けて世界を守り続けてきたのに。


 もちろんそれが彼の役割だし、見返りを求めているわけじゃないけど。


 でも、虚しいよね。


 どんなに一生懸命頑張っても『それが当然』って思われるなんて。


 感謝されるどころか、周りの大人たちは自分が得する要求ばかりを次から次へと彼に押し付ける。


 そのくせ彼が望むことを叶えてあげる気は、さらさらないんだ。


 いくら門川君が理性的でしっかり者でも、ため息もつきたくなるよ。


 でも門川君のそんな気持ちなんか関係ないとばかりに、3人は話を続けようとしている。


「聞こえていらしたのなら、話は早い。さっそく我らの娘たちとのお目見えの場を設けて……」


「ストップ」


 あたしは連中の言葉を遮った。


 そしてしま子の腕の中から立ち上がり、3人の方へ向かってスタスタと歩き出す。


「……なんだ?」


 胡散くさそうにあたしを見る目を、あたしは真正面で立って受け止めた。


 門川君も仲間のみんなも『なにをするつもりだろう?』って顔をして、あたしに注目している。


 ちょっとオッサンたち。いいですか?


 さっきから黙って聞いてりゃー、好き勝手なことばっかり言いくさりおって。


 そりゃあね、あたしに責任がありますよ?


 それは素直に認めるし、謝罪もいたします。


 でもね? それと門川君の結婚問題とは、話が別じゃないですか?


 そっちがその気なら、こっちも奥の手出しますけど?


「ねえ、門川君の正妻の座を狙うのなら、それ相応の資格が必要だよね?」


 なんといっても神の一族のトップと並ぶわけだから。


 血筋とか、家柄とか、世間の評判とかがすごく重要になるんだ。


 でないと周りが納得しないんだよ。
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