君はヴィラン ―冷血男子は結婚に懐疑的―
 ああ、せっかく話をする機会に恵まれたのに、婚活サイトのパーティで相手を探していると思われる事が、由真はものすごく恥ずかしかった。

「今日は天気がいい、テラスへ出ませんか? 陽も出ていませんし、紫外線の心配はなさそうですよ?」

 伊達男の言葉に従って、由真は伊達男と、ジョギングの彼と共にテラス席へ移動した。

 癪に障るが、確かに外は暖かで、美しい庭園を望む場所は、大勢人がいるところよりも心地が良かった。

 そつなく伊達男がウェイターへコーヒーと紅茶をオーダーし(その様子はなんというかスマートを通り越して笑える様子だった、由真は出っ歯でおフランス帰りのギャグキャラを思い出して、笑いを噛み殺すのに必死だった)、自己紹介をすませた。

 伊達男の方は寺田刀利(てらだ とうり)、ジョギングの彼は代ヶ根藍(しろがね あい)といった。

 藍さん、藍さんか……と、由真は伊達男、(彼は自分の事はトーリと呼んでくれと言っていたけれども)そっちのけで代ヶ根藍の方へ注視してしまった。

「へぇ、KISTの職員なんだ」

 下手に嘘をつくとボロが出そうだったので、由真は自分の仕事内容については詳細に言わず、正直にKISTの人間である事を告げた。

 二人は、特別な反応を見せずに、自己紹介を続ける。

「僕らは公務員」

 トーリの言葉に、こんな派手な公務員がいるのだろうかと由真はいぶかしんだが、そこで話を広げるのもどうだろうと思い、ぎこちない笑顔で、答えた。

「えー、本当ですか?」

 我ながら棒読みだなあ、と思いつつ、顔を少し硬直気味に言うと、

「でしょお?」

 と、トーリがこちらもまた白々しい笑顔で答えた。

 由真は、トーリを見ていると誰かを思い出すなと思っていたのだが、トーリは礼門に似ているのだ。人を食った様子で、自分のペースを作ろうとするあたりそっくりだ。

 少しばかり気まずい空気が流れたタイミングで、トーリのスマホが着信を知らせた。

「失礼、ちょっと席を外すよ、藍、抜け駆け禁止だからな」

 ウィンクをしてトーリが立ち去ると、由真は藍と共にその場に残された。

 まさか二人きりになるとは思っていなかったので、由真はいっそう緊張して、ティーカップを手にした。

 どうやら藍も同じように考えていたようで、二人揃ってカップに手をやる姿が同調しているようで、藍は照れたように目を背けた。

 ……なんだ、この人、すごくかわいいな。

 惚れた欲目かもしれないけれど、と、由真は思った。
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