シェアハウス
「私ね、真紀ちゃんが美味しそうに食べてる姿を見るのが好きなの。遠慮なく、沢山食べてね」
目の前に座った静香さんは、そう言うと小首を傾げて優しく微笑んだ。
「はい。いただきます」
静香さんが見守る中、1人食事を開始しはじめた私。
そんな私を笑顔で見続ける静香さんの視線が気になり、食べ進める手をピタリと止めると口を開いた。
「あの……。静香さんは、食べないんですか?」
「そうね。……じゃあ、一緒に食べようかな」
そう言って優しく微笑んだ静香さんは、自分の分の食器を出してくると私と一緒に食事を始める。
「このお肉、美味しいですねっ」
「今日のお肉は、チキンよ。明日は豚肉にしようね。……真紀ちゃん、豚肉は好き?」
「はい! 静香さんの作ってくれる料理なら、何でも好きですっ!」
「真紀ちゃんたら……。本当に、可愛いわね」
目の前でクスクスと微笑む静香さんを見て、あのサイトを見てこの物件に出会えた事。そして、静香さんに出会えた事に心から感謝した。
今思えば、当初不安に思っていた自分が馬鹿らしくさえ思えてくる。
(こんなに素敵な人と出会えるなんて……。やっぱり、即決して良かった)
私はチキンの乗ったスプーンを口へと運ぶと、蕩けるように柔らかく煮込まれたお肉を、4・5回噛んでから喉の奥へと流し込んだ。