【短編】手のひらを、太陽に…
 父親は口を開いた。
「…いいんだよ。その罪を背負ったとしても、志音には返しきれないくらいの罪を犯した。自分のことしか全く考えられずにいた。だけど、志音に刺してって言われたとき、包丁を差し出されたとき、我に返った。自分のしたことで娘がどれだけ傷ついたか、あの時初めて気付かされた。あまりにも気付くのが遅かった。謝っても謝りきれないが、すまなかった!」

そう言うと父親は椅子から立って地面に土下座をした。今度は志音が驚いた。

「…い、いいよ。わかったよ! …まだ、そんなことするお父さんなんて、裏がありそうで信じられないけど…。」

「…そ、そうだよな…。いいんだ。もう父親だって思ってくれなくても…。」
 父親は、その場で正座したまま頭を上げた。

「でも!そう言ってほしくもない!」
 志音はそう強く言うと、立ち上がった。

「今は受け入れられないけど…。頭の中ぐちゃぐちゃだし、あれだけ暴力受けて信じられないけど、でも…、でも…。……私のお父さんはあなたしかいないから。だから、父親と思わなくていいなんて、言わないで…。」

 志音はそう言って泣いた。

「…志音…。わかった…ごめんな。本当にごめん。ちゃんと罪を償って、志音にとって良い父親になれるようになって、戻ってくる。だから…。厚かましいかもしれないけど、待っててくれ!」

 そうして父親は地面におでこをつけた。

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