俺様社長に甘く奪われました
「弾いてみるか?」
「……ピアノをですか?」
隣に腰を下ろした奏多に聞き返す。
「ああ」
「無理です。私、猫ふんじゃったくらいしか弾けないので」
それも子供の頃のこと。今も覚えているかと言ったら莉々子に自信はない。
「俺が教えるよ」
奏多はピアノのふたを開け、莉々子の両手を鍵盤の上に置いた。
「本当に無理なんです」
「いいから、聴かせてくれ」
「もう……本当にひどいんですからね?」
息を吸い、吐き出すと同時に黒い鍵盤の上で指を動かす。
(確か、こうだったはず。……あれ? ちょっと音が違うような。じゃ、こうかな? ……これも違う)
グランドピアノに似つかわしくない音がポロンポロンと零れていく。
奏多は隣で笑いを堪えるように「ククク」と肩を震わせた。