ネコと教師

あの人はそうじゃなかっただろ。

内気で、おれたちが初めての受け持ちで、どう考えたって教師ってがらじゃなかったのに、一生懸命そうあろうとして、いつだって受け手のことを一番大切に考えていた。

こんなおれが見ていても痛々しいほど、いっぱいいっぱいのくせに、それでも生徒を思いやることを忘れなかった。

無茶なことでもできる範囲でいいから。

自分なんてちっぽけだけど、それでもせめて手の届く範囲には、満足であってもらいたい。

自己満足かもしれない。

ただの自慰にすぎなくっても、それに努めたいと思う在り方。

おれはそういう在り方に憧れて教師になったんじゃないか。

(だってのに、いまのおれはなんだよ)

まず我の保身ありきだ。

ひとりの生徒に手を焼いて、周りの目を気にして、それに怯えているようじゃ、こんなおれは教師なんていえないじゃないか。

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