たとえばきみとキスするとか。
胸の鼓動が教えてくれる。





「ねえ。あんまり話してる印象がなかったふたりが、なぜか親しげに見えてしまう現象って、どういうことだと思う?」


次の日。私は恋愛上級者でもあるしいちゃんに聞いてみた。


「なにそれ」

しいちゃんは野菜ジュースを飲みながらファッション雑誌のページをめくる。


「なんかうまく言えないんだけど、ただならぬ空気を感じたというか、お互いに気まずさが見え隠れしていたというか、とにかく変だったの!」

柊花はあのあと『買い物を頼まれてるから』と、私たちとは反対方向に歩いていき、柊花と別れた家への帰り道。


零はひと言も喋らなかった。


考えごとをしているような顔だったけど、私が違和感を感じた理由はひとつ。

零が柊花を見る目。


これは15年間幼なじみでいる私の勘としか言いようがないのだけど、零はあんな風にじっと女の子を見たりしない。

基本的に無関心だし、話しかけられても面倒くさいって顔をするのに、昨日の零にはそれがなかったのだ。

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