甘く、蕩ける。
雨の降る中で
その日の夜、私は頂いた薔薇を花瓶に挿し

てダイニングのテーブルに置いていた。


ガチャッ

「たーだいまー」

「・・・お帰り」

ベロベロに旦那が酔って帰ってくる。花瓶に

目をやるなり、それを持ち上げ床に叩きつ

けた。


「ちょっと!何すんの!?」


怒って旦那の胸ぐらに掴み掛かる。とんでも

なく吐く息が酒臭い。


「邪魔なんだよこんなの。趣味に合わね

え。こんなの飾るな」

旦那はそう言うと私を突き飛ばす。そのまま

寝室に上がって行った。


「・・・何で?何で・・・私がこんな目に

遭うの?何で・・・」

涙が止めどなく溢れ出す。勢い任せに家を飛

び出した。


「はぁっ・・・はぁっ・・・」

外は雨が降っている。私は濡れる事も気に

せず走り続けた。
< 7 / 39 >

この作品をシェア

pagetop