甘く、蕩ける。
「ごめんなさい。もう大丈夫で・・・ん

っ・・・」

腰に腕が回され、グッと引き寄せられる。

突然の甘い口づけに驚いてすぐ引き離し

た。

「なっ、何、するの・・・私は」

「分かってます。結婚・・・してるんですよ

ね?」

言おうとした事を先に言われてしまう。そう

いえば結婚指輪をはめていた。

「だからって、今の望月さんは明らかに旦

那さんのせいでこうなってるじゃないです

か。見れば分かりますよ」

彼に全てを見透かされ、言い返す言葉が何

もなくなる。それでもギリギリの所で、理

性が歯止めを掛けていた。

「望月さん。俺じゃダメですか・・・?」

真剣な眼差しで見つめられ、思わず目を逸

らしてしまう。顎を持ち上げられて再びじっ

と見つめられた。

「望月さん・・・俺の目を見て答えて」


ああ、ダメ・・・


そう思うのに。離れた気持ちはもう元に戻

らなかった。
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