クールな部長は溺甘旦那様!?
「やっぱり、君はここにいたな」

「剣持部長……? だめです、それ、返してください!」

取り上げられた離婚届に手を伸ばしソファから立ち上がるけれど、剣持部長の長身に届くはずもなく伸ばした手は宙を掻く。

「これはなんなんだ、と聞いている」

剣持部長の鋭い眼差しが私を射るように見据える。その視線からはもう逃れられない。

「なんなんだって……私が聞きたいですよ」

ダークネイビーのスーツに相変わらず顔が映りそうなほどに綺麗に磨かれた黒靴。まだ仕事中なのか、もう終わったのかはわからないけれど、今、私の目の前には確かに彼が立っている。

「莉奈、まずは君の顔をずっと見に行けなかったことを謝らせてくれ」

バツが悪そうに剣持部長が少し視線をずらして言う。

「……離婚したいって言う気持ちが後ろめたかったんですよね? 私なら、大丈夫です」

「は? なんだって?」

まるで見当違いの話をされたと言わんばかりに、剣持部長が声をとがらせる。
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