軍人皇帝の幼妻育成~貴方色に染められて~
「……アドルフ……、様……?」
心の準備が整わないまま抱きしめられて、シーラは驚きに固まったのち、心臓を急加速させる。
「……小さい身体でこんなにボロボロになって……、俺がどれほど怒っているか分かるか」
シーラの背中を掴む手に、ギュッと力が籠もる。肩にうずめられて顔は見えなかったが、アドルフの声は苦しそうなほど切なかった。
「誓え。二度とお前の身体に傷をつけるな。俺以外の男に守られるな。俺の側を離れるな。分かったな」
「……はい、誓います……」
シーラがメア宮殿を脱走してから、アドルフがどれほど心配していたのかが痛いほどに伝わる。
心配だけではない。結果的に傷を負わせてしまったことに対する罪悪感と、己の不甲斐なさへの憤りまでも、硬く抱きしめてくる彼の腕からは感じられた。
「ごめんなさい、アドルフ様。ごめんなさい……」
アドルフの広い背に腕を回し、シーラも彼を強く抱きしめ返す。
勝手な判断でアドルフと大勢の人に心配をかけた自分を、本当に愚かだと思った。そしてもう二度とこのぬくもりから、離れないと誓う。
ゆっくりと腕をほどいたアドルフは、まだ切なさの残る瞳でシーラを見つめ、額に軽くキスを落とした。「包帯が邪魔だな」と小声で拗ねたように呟いて。
このまま唇にもキスをして欲しくて、シーラの胸が甘くとろけだす。
けれど、今は欲望を満たす前に聞くことがあると、気を引き締め直した。
「アドルフ様、教えてください。クーシーと……ボドワンはどうなりましたか?」
大切なクーシーのことももちろん気がかりだけど、心配なのはボドワンだ。
彼はポワニャール大使という第三者の立場でありながら、シーラをフェイリン王国へ連れ出したひとりでもあるのだ。もちろん、彼もマシューズに騙され利用されていた被害者なのだが。