軍人皇帝の幼妻育成~貴方色に染められて~
 
青い瞳が今日は一段と艶を増しているのは、この後にどうなるかをもう理解しているからだろう。

子がどうやってできるのか、男女の閨での行いを学んだシーラは、もう無知な少女ではない。これからアドルフのキスを身体中に受け、女の悦びを花開かせ、夫の情熱を受け入れることを理解している。

もうふたりが愛を結ぶ時間を阻む問題は何もない。その安心感といよいよ妻の純潔をもらい受ける喜びを噛みしめ、アドルフはシーラの身体を優しく押し倒し、自分もガウンを脱ぎながらベッドへと上がった。

そして、清純な肌を眼前にさらすべく、ネグリジェのリボンに手を掛けたときだった。

「――ん?」

アドルフは射貫くような鋭い視線を感じ、動きを止めた。

そして振り返って気づく。巨大なベッドの隅、カーテンの影で暗くなっているシーツの上に、黒くてこんもりとした丸みがあることに。

「……シーラ。初夜のベッドに間男がいるようだが」

滾る情熱が一瞬で冷めていくのを感じながら、アドルフはシーラから手を離し黒い丸みを睨んだ。

影と見まごうような黒い丸みは金色の眼をジッとこちらに向け、恨めしそうに、観察するように視線を送ってきている。

シーラは「間男?」と不思議そうな顔をしたが、アドルフがベッドの隅を指さすと「ああ」と納得した声をあげた。

「だって、初夜がきちんとできるか心配だったんですもの。だから、クーシーがそばにいてくれたら心強いと思って」

あっけらかんと言い放った妻に、アドルフは項垂れて両手で顔を覆った。

「アドルフ様? どうしたの?」

突然落胆してしまった夫を気にしてシーラが心配そうに声をかけるが、アドルフは気持ちをどう立て直していいか分からない。

打ちのめされているアドルフを見て、クーシーが可笑しそうに笑って見えたのは幻覚だろうか。犬が笑うはずはないのだが、どうしてか嘲笑されている気がする。

「アドルフ様、大丈夫? 子作りできますか?」

無垢で純真すぎる妻に、犬に見られながらそれをするのがどれほど恥辱的かを理解させるには、どうしたらいいのか。皇帝は深く深く悩む。


はたして、誉れ高き軍神皇帝とその幼妻が無事に初夜を迎えられたのかどうか。

それは神と犬のみぞ、知るところである。



 
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