軍人皇帝の幼妻育成~貴方色に染められて~
側近達はしばし視線を交わし合ったけれど、やがて命令に従い武官や衛兵らをつれて扉へと向かっていく。
シーラも宮廷顧問官に促され玉座を立ったが、アドルフのことが気になって離れることができない。
それに気づいたアドルフが宮廷顧問官に向かって首を振ると、宮廷顧問官はシーラを残し部屋から出ていった。
アドルフとふたりきりになった部屋には、さっきとは違う緊張感が漂う。
もう身が竦むような険悪な雰囲気はない。けれどその代わり、アドルフの苦悩や葛藤が伝わってくるようで、シーラは戸惑った。
(どうしよう。アドルフ様、とっても苦しんでいるみたい。私、どうしたらいいの……?)
彼がどうして苦悩しているかは分からない。けれど原因は間違いなく自分にあると思うと、彼のそばを離れる気にはなれなかった。
声を掛けたくても何を言っていいか分からず、シーラがもどかしく思っていると。
「…………俺は酷い男か……?」
項垂れていたアドルフが、ボソリと呟いた。
俯いていたので表情はよく見えなかったが、口もとがわずかに自嘲気味に笑った気がする。
「……聞くまでもないか。教会に帰りたがっているお前を閉じ込め続け、無理やり皇妃に仕立て上げようとしているんだからな。あの男の言う通りだ」
アドルフの言葉を聞いて、シーラはどんどん悲しくなってくる。
いつだって自信も余裕も漲らせているアドルフが、こんなに弱く見えるのは初めてだ。どうしてかシーラにはそれがつらくてたまらない。
元気を出して欲しい。いつものアドルフに戻って欲しい。そう強く願うのに、励ます言葉が上手に見つからなくて、シーラは焦れた。
(どうすればいいんだろう。私がアドルフ様にしてあげられることって、何――)
考えて、ふと天井を仰いだシーラは、そこに答えを見つけた。