軍人皇帝の幼妻育成~貴方色に染められて~
教会の外で待機していた侍従や衛兵らは、アドルフがシーラの腕を半ば強引に引いて出てきたことに目を剥いた。てっきり婚約者と仲良く連れ添って出てくるかと思いきや、まるで駄々を捏ねている娘と強引に手を引いている父親みたいではないか。
侍従らがポカンとしているとアドルフは自分の馬にさっさとシーラを乗せ、自らもその後ろに乗って手綱を握った。そして呆気にとられている侍従たちに命じる。
「この教会に在るものを全部宮殿まで運べ。クルミも、シスターも、犬も、全部だ」
それだけ言うとアドルフは馬の腹を蹴り、ひと足先に馬車のある森の出口まで向かっていってしまった。
「ひ、ひ、ひゃああ。怖い、怖いですっ」
シーラはどうやら馬に乗ったことがないらしい。すっかり怯えて馬の首にすがりつく彼女を、アドルフは落っこちないように片腕で支えてやる。
そのあまりに華奢な身体の感触に、思わずまた溜息が出た。
(講和条件の政略結婚のはずだったが、とんだ計算違いだ。……まずは花嫁教育。いや、それより、なんとしてでもシーラの身体をもっと成長させなくては)
支えるために腹にまわした腕をギュウギュウ掴んでくるシーラの小さな手を見て、アドルフは思う。
はたして自分はこの娘を、妻として抱く気になれるのだろうか――と。