戦国恋武

女の人は、1人しかいない。
さっきから、冷たい空気を創ったのも、落とし前イベントを催促していたのもこの人だ。



綺麗な人だなぁ…
若干つり目で大きく二重でパッチリとしていてまるで猫のような目だ。肌も透き通るように白くて、一言で言うとクールビューティ。



彼女の一声で固まっていた男性陣が動き出す。



「では!」



では!じゃねーよ!
夢とはいえ、目の前で人が死ぬのは見て気分が良いものでは無い。
自分が言うのもなんだが。



森可成さんと思われる切腹人が小刀を握る手に力を込めたのを見て、おもわず目をギュッと閉じる。



「待て。」



女の人が止めた。
再三催促していたのに。



「もう良い。蘭丸も元服したとはいえ、日が浅い。まだまだ子供じゃ。子供のしたことをとやかく言う殿ではないわ。のぉ殿?」



女の人がこっちを向いて話を振ってくる。



殿?え、私?どうして?
今はそんな事どうでも良いか。
とにかく私はコクコクと首を縦に振る。



「し、しかし…」



森可成さんが渋る。
命助かったんだから、それで良いでしょう。
何渋ってるのこの人。
そんなに死にたいの。私と同じですね。



「そんなに死にたければ、殿の為に死ね。お主の切腹は殿にとって無駄じゃ。死に方を選べ。…と殿が言っていた。」



またこちらを見る。
え、また私?
再度コクコクと首を縦に振る。



「「有り難き幸せにございます。」」



森可成、蘭丸の親子2人で頭を深々と下げる。



切腹は無しになって、有難うはわからなくもないが、何が幸せなのだろうか。ドMさん?


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