今夜、お別れします。


「この資料と、コレと、コレ、作ってくれたの羽山さんでしょ?」


彼の仕事がひと段落ついて、私が影でコッソリ仕事を手伝うこともなくなって数週間経った頃、突然彼に声を掛けられた。


目の前に差し出されたのは、確かに私があの時作ってものだった。


「資料1つにとってもさ、クセって出るもんなの。部が違うから気づかなかったけど、この前偶然羽山さんの作った資料目にしてさ。だから、今更誤魔化さないでよね」


言い逃れさせないと、キッパリ言われれば頷く他なく。


余計な事をした事を怒ってるのかと思ったら、強引にデートに誘われた。


女の子ならみんな喜ぶだろう、お洒落なイタリアンレストランに連れていってくれたり、夜景を見にドライブに連れていってくれたり。


お礼だとしても十分過ぎる誘いに、何回目かに誘われた時、「もう十分です」と誘いを断った。


だって、たったあれだけの資料作りや雑務をしただけで受けるお礼にしては、もらいすぎだ。


正直に言えば、彼が連れていってくれる場所が、私にとっては敷居の高い場所ばかりで、緊張するし申し訳ない気持ちばかりが優って、心底楽しめなかったというところもあった。


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