シンデレラのドレスに祈りを、願いを。

★5


*―*―*
☆☆☆



悠季くんとの面会を明日に控えた夜。
店を閉めてダイニングテーブルで遅い夕飯を取っていた。

お風呂から出てきた悠斗が冷蔵庫から麦茶のポットを取り出しコップに注ぐ。高校に入って背も伸びて、背格好はますます悠季くんそっくりになった。

いつもなら、おやすみ、と言って部屋にもどる悠斗が向かいに座った。


「母さん、ちょっといい?」


悠斗はピンと背筋を伸ばし、太ももの上に拳を置いた。なんとなく張り詰めた空気が流れる。私も正面に構えた。


「進学先のことなんだけど、俺、留学したい。っていうかすることにした。場所はカナダのバンクーバー。母さんも地名くらいは聞いたことあるでしょ? システム開発を学ぶために行きたいんだ」
「留学? どうしたの突然」
「母さんには急だよね、こめん。でも中学の頃からずっと考えてた。でも俺に行ける実力が付くか不安だったしお金のこともあったし。でも奨学金制度を利用して海外にいける道筋がついたんだ。だから……母さんをひとりにするけどごめん。決めたんだ。留学を許してくたさい。お願いします」


悠斗はそのまま上半身を前傾させ、深く頭を下げた。

突然の話に頭がついていかない。カナダとの時差は何時間? 飛行機でどのくらい? 悠斗が遠くに行ってしまうなんて。
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