ホワイト・バースデイ
「……待って、止まんないから止めて」

耳を赤くして、結城は私の肩を掴んでうつむいてしまった。こういうことをするのに慣れている人だと思ってたから、思わず面食らう。

「えっと、はい。じゃあ、もうダメです」

同じように顔を赤くして、しどろもどろにそう返す。結城はハッとしたように壁にかけられた時計を確認して、ため息をついた。

「そろそろ朝礼始まんね。戻ろっか」
「う、うん……」

何事も無かったように私から離れて、結城は振り返って資料室の鍵を開けた。

「来年のバレンタインは本命期待してるから」

私を振り返りもせずそう言って、結城は扉を開けた。

「それから、男が女にネックレスをプレゼントする意味も勉強しておいて」

言いながら、結城は後ろ手に私の手を握った。


さっき手を引かれた時は何も感じなかったのに、何故だか、肌が触れ合った途端に胸が高鳴る。

「……うん」

ほんの少しだけ芽生えた、今でまで感じたことのない何とも言えない感情に戸惑いながら、私はそっと彼の手を握り返した。


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