隣の席の不思議系彼女
「ごめんね安城。野崎君。
恥ずかしいとこ、見せちゃった。
でも、一人でいるのも寂しくて……。
ごめんね」

無理に笑う壺山に、黙っていた野崎が声をかけた。

「……そのワンコ、もう会えないん?
最期のお別れとか、出来ないん?」

「……お父さんが……。
見せれないって……。
さよなら、出来ないの……」

野崎の質問に、悲しそうに壺山が呟く。

聞けば、病気になって入院してから、会わせてもらえないらしい。
病状がひどくて、娘に見せたくないとかで。

父さんが言ってた「社長は娘溺愛」を思い出した。
だからか。

「さんちゃんがどんなでも、大好きなんだけどな……。
最期くらい、しっかり見送ってあげたかった……」

言いながらぽろぽろと涙を落とす壺山。
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