未練と祝福 〜14年目の永遠の誓い 番外編(3)〜
その後、2人の結婚しましたハガキが届いた。

住所なんて教えたっけ? と思いつつ、同じ学校なのだから、いくらでも調べる手段はあるよなと思う。


教会をバックにした幸せそうな2人の写真の横に、短いメッセージが書かれていた。



『いつか、どれだけ愛しても文句言われない、お前だけの女の子、見つけろよ。 叶太』



おもて面の差出人欄に、『牧村叶太・陽菜』とあるのを見ても、何も驚かなかった。

ただ、驚かない自分に少し驚いた。

だけど、ああそうか、もう広瀬先輩じゃないんだなと思うと、少しだけ、……そうほんの少しだけ、妙にもの寂しい気持ちになった。



もらったハガキを手に持ったまま、ベランダに出て、街の明かりをぼんやりと眺める。
 
ガーデンパーティでの「もういい」に加えて、ハガキに書かれていた『いつか』の言葉に、陽菜ちゃんへの横恋慕を認めてもらえた気がして、後ろめたさは薄くなった。


だけど、そう、これだけ見せつけられても諦めきれない自分ってなんだろう?

いつか、オレだけの女の子が本当に現れた時、分かるのかな?


いつか、そう、いつか……広瀬先輩(違うと知っていても、他に何と呼んでいいか分からない)みたいに、全身全霊で愛せる人ができたらいいな、とそんな言葉が頭をよぎった。



地方都市のベッドタウン、マンションの十階から見る夜景は、東京みたいな街にはまったく叶わないのだけど、

それでもオレには十分綺麗で、

オレはバカみたいに、街の明かりが少しずつ消えていく様子を見続けた。


たまに、葉書の中の陽菜ちゃんと広瀬先輩をチラリと見ながら……。



どれほど経った頃か、街の明かりがほとんど消えた頃、ようやく、2人の幸せを願えている自分に気づき、何だかすごくホッとした。

まだ全然終わっていないけど、ようやく一歩前に進めた気がして、心からホッとした。



「陽菜ちゃん、おめでとう。……幸せになってね」



 そんな小さなつぶやきが、夜の街に吸い込まれていった。



〈完〉
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