《短編》ガラクタ。
まるでそれは宣戦布告のようで、上等だと思ったあたしはやはり、負けず嫌いなだけなのだろうか。


例えばお粥を作れば鳳凰をもう一度拝めるんだと思ったあの日と同じように、何故かあたしはそれくらい易いものだと思ったのだ。


本当に、何もかもが短絡的な思考なのだろう。



「アンタ、ぶっ飛んでんね。」


「知ってる。
けど、そりゃお前もだ。」


そりゃそうだ、なんて思うより先に唇が奪われて、やっぱ絵じゃなくて本物のアラタじゃないとイクことなんて出来ないと思った。


口付けを交わらせながら彼は纏っていた違和感だらけだったスーツを脱ぎ捨て、あたしは露出した鳳凰の宿る背中へと腕を回した。


そのままアラタがソファーに身を沈めているあたしの上へと覆い被さって来て、その瞬間に愛しさばかりが込み上げてくるのだから。



「でも、お前がもしホントに俺を超えたら、どうなるだろうな。」


「嫉妬に狂う?」


「…そしたらどうすんの?」


「つまんない男なんかサヨナラだよ。」


そんな風に言ってやれば彼は、鼻先ほどの距離で不敵に笑った。


まるで猛々しい野生動物のような顔で、喰われるくらいなら逆に喰ってやるんだ、なんて思いながらまた、あたし達は舌を絡めた。


感じまくって乱れた吐息ばかりが宙を舞い、二人分の熱はすぐに部屋を支配する。


やっぱり無意識のうちに鳳凰に爪を立ててしまい、痛ぇよ、なんて意地悪く言った彼はあたしの中へと身を沈めた。


あぁ、やっとわかった。


あの絵はまるでブラックホールのようで、初めて見た時のアラタの瞳の印象と同じだったんだ。



「…アラタ、マジ最高だよっ…」


「馬鹿、当然なんだよ。」


セックスが、ってだけの意味じゃなかったんだけど、まぁ良いや。


ガラクタだとしか思われてなかったものがアートなものへと変貌するように、あたしはこのぶっ飛んだ男によって変えられていく。


これほどまでに楽しいことなんて、他にないじゃないか。











END


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