《短編》ガラクタ。
白を基調とした部屋の中は知らない間にオレンジ色に染まっていて、斜に差し込む西日に目を細めてしまう。


テーブルの上にはあたしの飲み干したビールの缶が乱雑に置かれていて、こんなに飲んだっけ、なんて思いながらまた、それを流し込んだ。


煙草もビールも嫌に苦々しいし、ひとりで飲むなんてこんなに寂しいものだったのかと、今更ながらにそんなことを思わされた。


刹那、ガチャリと扉が開き、視線を上げてみれば一番に目に入ったは怒った顔で、あたしは背中を預けていただけだったソファーに体を倒した。



「電話ぐらい出ろよ。
つか、お前マジでどしたの?」


「犯された。」


「…何それ、誰に?」


「アンタの絵に。」


何だそんなことか、と言わんばかりに彼は安堵のため息を吐き出しながら、こちらへと歩み寄ってくる。


それでもビールの空き缶の数にはさすがに眉を寄せられてしまい、あたしは不貞腐れるようにソファーへと顔をうずめた。



「泣いてんの?」


「アンタ、やっぱすごいよ。
あたしだけに絵描けとか、言う資格ないと思った。」


「お前、ふざけてんの?
それは俺が決めることだし、お前がやる気なくすこと言うなよ。」


「…だって…」


「じゃあお前、俺を越えてみろよ。
つか、そんなこと言う今のお前じゃ勃たねぇわ。」


顔を上げ、涙混じりに唇を噛み締めるようにして睨めば、彼は優しく口元を緩めた。


ただ嫉妬してるだけってわかっているのだろうアラタは、“大丈夫だ”と、あたしの頭を撫でる。



「俺を縛っときたいなら、飽きさせねぇ女で居ろ。」


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