はじめては全部きみでした。

疑惑の休日



「それでね、なっちゃんすごく怒ってた」



ヒナが今日の出来事を歩きながら楽しそうに話している。

あの日ーーーーーヒナが学校を休んだ日から、ずっと。


こんな風に笑うヒナを俺は初めて見た。
なにかあったんだろうが、聞くことができずにいる。


【風邪引いちゃった。学校休むから今日は朝一緒にいけない…ごめんね】


あの日、早朝にきたヒナからのライン。


今まで一度も休んだことのないヒナが休むなんて…

そう思い、一度は学校へ向かった足は自然にヒナの家の前に来ていた。



外からヒナの部屋を眺めていると、ヒナのお母さんが出てきた。



「あら、啓ちゃん」

「ヒナは…」

「あーあのこったら今日おかしいのよねえ」



やっぱりかなり具合悪いのか?

でも…おばさんの表情からはそんな様子は汲み取ることができない



「ごめんね、ひとりで学校行かせることになって」

「あ、いえ…俺は大丈夫ですけど…ヒナが…」

「まあでも様子はおかしかったけど、いつもより元気に出ていったから」



ーーーえ?

おばさん、何を言っているんだ?



「あんな早くから係の仕事なんて今までなかったのにねえ……あ、啓ちゃんごめんなさい、家の電話鳴ってるから入るわね」



そう言って中に入ってしまった。

もう一度ヒナの部屋を見上げる。


ヒナーーーー?

どこにいるんだ?


最近のヒナはなんだか少しおかしい気がしていた。
何か、危ないことに巻き込まれていたら…



"まあでも様子はおかしかったけど、いつもより元気に出ていったから"


おばさんのセリフを思い出した。



どうして、俺に嘘をついたんだ?

今までそんなことなかったじゃないか。

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