はじめては全部きみでした。


「そのキーホルダーどうしたの」



教科書を取り出してる間に鞄から反射したゴッホのキーホルダーを指さしてなっちゃんが言う。



「これは……」

「あ、ゴッホ展?行けたんだ」

「う、うん。そうなの。平日の午前中だからすいててーーー」



しまった、と思った。

その日は学校をサボった日。



「ああ、だから立花も休んでたんだね」

「う、うん」



咄嗟に肯定してしまった。
ひとりで行ったと言えば、それこそ疑われてしまう。



「楽しかった?」

「うん…」



それなら良かったとなっちゃんが微笑んだ。

あの日、啓介にも嘘をついて、今日は親友であるなっちゃんにまで嘘をついてしまった。

心が痛い…。



あれ…?

でもどうして、啓介も休みだったんだろう。
なっちゃんが学校で見かけていないだけだろうか。


< 42 / 171 >

この作品をシェア

pagetop