キミが笑ってくれるなら、それだけで…
部活に向かう3人と別れて

自宅近くの行きつけのスーパーに

立ち寄った私は

カゴをぶら下げ、日下部くんの

お弁当のおかずを何にしようかと

悩みながら店内を物色していた。

今日見た限りだと出し巻き卵は

必須だよね…

あとは、何がいいだろう?

何でもいいって言ってくれたけど

人様が口にする物だから

栄養も考えた方が良いよね、

日下部くんは大きくて

しかも運動部だし…

定番は唐揚げとかウインナー

あと少しは彩りも考えて

プチトマトも。

あとは私の中身と同じ物で

いいかな?

あれ…?

そういえば…

すっかり忘れてたけど

日下部くんは私を好きって

言ってくれてたよね?

あの時の私は

自分の事で精一杯で

返事してない…

そんな私がお弁当作るなんて

これって、日下部くんに

気を持たせる事にならない?

日下部くんの事は好きだけど

それが日下部くんと同じ好き

なのかって聞かれたら

分からない…

だって家族以外に好きとか

思った事なんてないし。

すごく優しくてニコニコ笑う顔は

心がほっこりするように温かいし

可愛い顔立ちなのに、時折

見せる顔は男らしい。

クラスで人気の理由を聞いた時は

へーとしか思わなかったけど

今ならそれも頷けるのは…

一緒に過ごすようになったからで。

あれだけ拒絶したのに

変わらずに接してくれるのは

嬉しいけど…

異性として好きなのかは

本当に分からない。

あれから、その事に触れられて

ないから日下部くん自身

忘れてる可能性もあるし

ずるいかもしれないけど

そのままでいいって思うのは

ずるいかな?

とにかく明日は約束したから

作るけど、告白の事は

またあとで考えよう…

いつもは1人分の食材しか

買わないから気が付かなかったけど

2人分って結構重い!

フラフラした足取りで家に

辿り着く頃にはヘトヘトで

手は痺れていた。

翌日の昼休み…

約束通りお弁当を渡すと

日下部くんはニコニコしながら

美味しそうに食べてくれた。

「うまー!!

日和、料理すげーうまいな!

どれも美味しくて

俺幸せー!」

そして、あれだけ詰め込んだ

おかずは瞬く間になくなった。

自分の作った物を美味しいと

言って貰えるのは嬉しい。

それに

こんな幸せそうな顔…

初めて見た気がする。

へにゃっと笑う日下部くんの

笑顔に一瞬、ドキッとした私は

心臓の音が早鐘を打つ理由が

分からずに首を傾げた。

息くるしいのに嬉しいなんて

私、なんか変だ…

自分のお弁当に手を付けずに

考え込む私に突然日下部くんが

顔を覗き込んできて

私の鼓動は早くなっていく。

ドクドク…ドクドク…

「日和?どしたんだ?」

思っていたよりも近い距離に

私は仰け反った。

不思議そうに見つめる

日下部くんの色素の薄い

茶色がかった目の中に

自分が映っているのが

分かって、真っ赤になる私は

「う、ううん!何でもない!

ただ急に目の前に

日下部くんの顔があって

びっくりして…」

と、呟いた。

「あ、ごめん!

距離感分かんなくて

近づきすぎた。

俺いっつも日和を驚かせて

ばっかだよな…ごめん」

申し訳なさそうに肩を落とす

日下部くんに弁解した。

「ちょっと

考え事してただけだから」と。

すると、「何考えてたんだ?」と

尋ねられて私は焦った。

そこはスルーして欲しかったです。

だって、なんだか呼吸も

上手く出来なくて

焦るとポロッと言っちゃいそうで。

日下部くんの事考えてました…

なんて言えるわけない!

だから私は笑って誤魔化した。

「あー…なんだったっけ?

へへ、忘れちゃった」

そんな私をジッと見つめてくる

日下部くんにヒヤヒヤしながら

見つめ返すと…

「そっか…

ってか、忘れたって

日和って案外抜けてんのな!」と

笑った。

抜けてるなんて初めて言われたよ…

何気に失礼だと思う。

まぁ、でも

誤魔化せたかな?

でも、私本当にどうしたんだろ?

いつもと変わらない笑顔の

日下部くんを見ただけなのに

ドキドキするなんて…

それにあの綺麗な目に

惹きつけられるなんて

私やっぱりどこか変だ。








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