Perverse
「ありがとうございます」



「お礼を言うのはまだ早いよ。三崎さんの得意先を考えたらまだ足りない。僕も後で調整するね」



「俺も調整きくと思います」



そう言い出してくれた柴垣くんに、津田さんは片手をあげてストップをかけた。



「ありがとう柴垣。でもそれは最終手段にしてくれる?柴垣と三崎さんには数字を上げてもらわなくちゃいけないからね」



確かに柴垣くんは顧客ををしっかりと掴んでいて、飄々としているけれど売上を抜いたことは一度もないくらいの営業マンだ。



気持ちはありがたいけれど、柴垣くんの足を引っ張るようなことはしたくない。



「それよりも他店営業の取り置き状況を確認してくれる?回してもらえそうなトコあったら俺に教えて。連絡してみるから」



「俺、連絡しますよ」



「いや、俺がする。柴垣と三崎さんは営業ツートップだからね。誰しも嫉妬心はあるもんだよ」



それ以上の言葉は続けなかったけれど、きっと柴垣くんや私が動けば、うまくいくものもいかなくなる可能性もある。



きっと津田さんはそういうことが言いたいのだろう。



「わかりました。お願いします」



すぐにパソコンに向かってくれる二人を見て目頭が熱くなった。
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