Perverse
みんなの懐にスルリと入っていって、何の不快感も持たせずに自分の言いたいことを言って通す。



自分にはなくて、今最も欲しいスキル。



そんな反比例の私を柴垣くんが気に入らないのも仕方のないことなのかもしれない。



楓や沙耶ちゃんも他の人だって柴垣くんとの距離をあっという間に縮められたっていうのに。



私はいつまでたってもガチガチで、彼を目の前にすると上手く話せない。



インスタントコーヒーながら、お湯を注ぐとやはり落ち着くいい香りがした。



もしかしたら。



今このタイミングで柴垣くんが現れたのは、何かの予兆なのかもしれない。



私も変わりたい。



柴垣くんみたいに。


怖いけど、苦手な人だけど。



それでも逃げずに、目を逸らさずに彼を見てみよう。



この時の私はまだ、前向きに彼を受け入れようとしていた。
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