ねぇ先輩、名前をよんで。
「大事な人ちゃんと自分で守れるようにって鍛えてたんだ」
また遠くを見る先輩。
誰のことを考えているんだろう。
なんて言うまでもない、か……。
今日はいつも以上に先輩が落ち込んでいるような、
そんな気がする。
「春先輩」
私は名前を呼んでから笑顔を作った。
「春先輩の笑顔が好きです」
「どうしたの突然?」
先輩は不思議そうな顔をして私を見た。
「ちょっと言いたくなっただけです。
元気、出してくださいね」
何があったのか、
なんて聞くことは出来なかった。
だけど、それだけ言えたから十分だ。
「今日は助けてくれてありがとうございました、
本当に助かりました」
私は、先輩にお礼を言って立ち去ろうとした。
その時、パシッと腕を取られた。
え……?
「ズルいなあ。言い逃げして帰ろうとするなんて」