君の日々に、そっと触れたい。
「ごめん、桜………。重いな、俺の話」
そう言ってまた取り繕って笑う李紅。
その笑顔は、出会った頃より少し痩せてしまったように思えた。
腕には、無数の点滴の跡と、鬱血したような痣がある。
───きっと、今までだって、気づいていなかったわけじゃない。
どうして気付かないふりをしてしまったのか、それも分かってる。
だけど「李紅はそんなこと望んでない」と言い訳をして、この答えからずっと逃げ続けてきた。
本当は、口にするのが怖かっただけなのに。
私は…………
「私……李紅に死んで欲しくない…!」
喉を突いた言葉は、口に出すと思ったよりも酷く残酷で、途端に後悔した。
それなのに、言葉と同時に溢れた涙が、止まらない。
「桜…………っ…」
李紅は珍しく、言葉を詰まらせて目を逸らした。
きっと李紅は、私にこんなこと言ってほしくなかった。
それは分かってる。それなのに……
「これから先もずっと………何年後も李紅が居てくれるなら、私は簡単に、生きていたい、って思えたのに……」
追い打ちを、かけた。
馬鹿だ、こんなの八つ当たりだ。
私が死にたいって思ったのも、
李紅が一年後に死んでしまうのも、
李紅のせいじゃないのに。
「…………ごめん」
李紅は小さく呟いた。
「……確かに俺、ずるいな。桜に生きろと言っておいて、そばにいろとか言っといて、全部押し付けて自分は死ぬんだから」
「……違う、李紅……」
そんな顔させたいわけじゃないのに。