君の日々に、そっと触れたい。

「生きられなくってごめんなさい」

【桜 side】



その日は借りた浴衣を返す為に、教えて貰った夕実ちゃんの家を訪れた。

夏休みの宿題に追われていた夕実ちゃんから、ちょっと息抜きに付き合ってと言われて駅前のショッピングモールで安売りされていた夏物の服を物色していた。

お互いに気に入った服を見つけられて、満足して店を出て、どこかで早めの夕食でも食べようかと話し合っている時だった。

駅の方がやたら騒がしかった。


人だかりが出来ていて、救急車はまだ来ないのか、と大声であちこちから聞こえた。

私達は顔を見合わせて首を傾げた。


「あの……なんかあったんですか?」

気になって、後ろの方にいたおばさんに尋ねると、おばさんは心配そうに話してくれた。


「駅で中学生くらいの子供が具合い悪くなって倒れてるらしいのよ。随分前に救急車を呼んだんだけど、花火大会で道が混んでるみたいで……」

「中学生くらいの…………」

なんだろう、嫌な予感がする。


「そう中学生の男の子だと思うよ。ちらっとしか見てないけど、なんだか外国人みたいな子だったわよ」


「………………っ!」




おばさんにお礼を言うことも忘れて人混みを掻き分けて走った。




───違って、お願い…………!


李紅じゃない、李紅のはずがない、と願う度に、心臓が暴れ回るように胸が苦しい。



「すみません、通してください!すみません!」

人の迷惑なんて考えてる余裕ない。お構い無しに人混みを抜ける。




そして、この目に確かに映した光景に、ひゅっと、息が詰まる。

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