君の日々に、そっと触れたい。
背中を向けたままの李紅が、息を呑む音がした。
「お願い、私も………」
「……………自分が何言ってるのか分かってんの」
「わかってる」
「わかってねぇよ!」
李紅は声を荒らげて振り返った。
見たことない顔をしていた。今までにないくらいに、李紅は怒りを露にしている。
「俺は………俺はもう嫌なんだよ!もう桜から何も奪いたくないんだ…!」
嘆くような叫びだった。
…………どうして、そんなこと言うの。
「…………違うよ、それは違う」
李紅は。李紅は何にも奪ったりなんかしてない。
「じゃあ私は、どうしてここにいるの?李紅が、救ってくれたからでしょう?李紅が、私に今日を与えてくれた!」
何も返せてないのは、私の方なのに。
「居場所なんかなかった私に、居場所をくれたのは李紅だよ。あの時からずっと、私の居場所は李紅なのに」
だから…………お願いだから。
「私から、李紅を奪わないで…………!!」