御曹司と契約結婚~俺様プレジデントの溺愛に逆らえません~
「奏」

鷹凪は手を広げる。まるで胸の中に飛び込んでおいでとでもいうように。

奏は手をとり、恐る恐る彼の懐に一歩踏み込んだ。
戸惑う奏とは正反対に、鷹凪は触れ合うことになんの躊躇いも示さない。ぎゅっと強く抱きしめる。

「突然呼び出して悪かった。お前が花が好きだと知って、どうしても見せたくなって――藤じゃなくて悪かったな」

「そんな……とんでもない」

鷹凪から少しだけ体を離し、奏は潤んだ瞳を彼に向ける。

「こんな素敵な光景、初めて見ました!」

なにもかもが嬉しかった。

鷹凪が自分をここまで呼んでくれたことも、この綺麗な光景を見せたいと思ってくれたことも、忙しい中、このために時間を割いてくれたことも。

「お前が言ったんだぞ。俺と一緒に花を見たいって」

「でも、本当に見れるとは思いませんでした」

「……ここまでくるのは大変だっただろう」

「この景色を見たら大変さなんてすべて吹き飛びました。本当に嬉しい」



< 40 / 147 >

この作品をシェア

pagetop