御曹司と契約結婚~俺様プレジデントの溺愛に逆らえません~
もうすぐ太陽が地平線の奥へと沈む。先ほどまで色鮮やかだった花々は、今は薄っすら茜色に色づいて、夕焼けの海のように広がっていた。

「奏。俺はお前を幸せにすると誓ったよな」

目の前に広がる花々を見つめながら鷹凪が不意に呟いた。

「はい」

「簡単に出来ると思っていた。地位と金があれば、女ひとりくらいいくらでも。だが、それがとても難しいことに気づいた。お前は俺の地位や金なんかより、まったく別のものを求めてくる。だから、前言撤回させてくれ。お前を幸せにできるかどうかはわからない」

ぎゅっと奏の肩を抱きながら、鷹凪が静かに語る。奏はじっと彼の紡ぐ言葉を聴いていた。

「だが、全力でお前に尽くすと誓う。俺なりの精一杯ってやつで、お前を大切にする……だからそれで許してほしい」

奏の額にそっと口づけて、誓いを立てる。さらにその先を求めようとした鷹凪に、うしろで黙って見守っていた篠田が咳払いをした。

「近くに宿を取りました。今日はおふたりでそこに泊まっていってください」

「ありがとう篠田。助かる」

「……あなたの謝辞を久しぶりに聞きましたよ。結婚とは恐ろしいですね。人が変わったようだ」

クスリと笑った篠田に、鷹凪もつられて笑う。

「お前もしてみたらどうだ。その嫌味ったらしい性格が直るかもしれない」

「……そうだといいのですが」

鷹凪は自分の運転する車の助手席に奏を乗せた。篠田が先行して車を走らせ、その後を鷹凪がついていく。

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