御曹司と契約結婚~俺様プレジデントの溺愛に逆らえません~
「『大好き』の方が嬉しかったんだが。尊敬、ね。ありがたく受け取っておくよ、奏さん」

不意に自分の名前が飛び出してきたから、奏はハッと目を瞬いた。
大勢いるボランティアの中で、まさか名前まで覚えてくれているとは思わなかったからだ。

「ボランティアの方の名前、全員覚えてらっしゃるんですか? 凄いですね」

「いや。君は別格」

奏はドキリと肩を震わす。特別役に立った覚えはないけれど……まさか、なにか悪目立ちしていただろうか?

「あ、あの……どうして……?」

見るからにオロオロとした奏に、鷹凪は珍しくちょっと悪戯っぽい表情を浮かべた。

「かわいいから、って言ったらどうする?」

「へっ!? あ? あの……?」

「はは、冗談だよ。君の噂は、篠田からよく聞いているから。いつも尽力してくれてありがとう」

ふんわりと笑って鷹凪は言う。

篠田とは彼の秘書であり、事務所の切り盛りを任されている人物だ。ボランティアへの指示も総括している。

他人との関わり合いが苦手な奏だが、篠田に名前を覚えてもらえたのは幸いだった。日々なにかと気にかけてもらっている。
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