御曹司と契約結婚~俺様プレジデントの溺愛に逆らえません~
「篠田は本当に君がお気に入りみたいだ。とても謙虚で、真面目で、経歴も文句ない――」

経歴? と奏は首を傾げたが、彼の誉め言葉をおろおろとしながら受け取る。

「それから、人を思いやる心を持っている。さっきみたいに」

彼の視線が道の先に向く。そこにはもう先程助けたおばあさんの姿はなく、無事に家に帰れたのだとホッとした。

「ぜひ俺に、と、篠田が薦めてね。それで、少し考えてみたんだけれど――」

薦める? と再び首を傾げながら、なんのことを言っているのだろうかと考える。

そんな話をしている間に信号が青に変わった。
鷹凪は傘を左手に差し替え、おもむろに右手を奏へと伸ばす。

(あれ?)

突然肩に手を回され、驚いて見上げた先に普段よりもちょっとだけ甘い、トロンとした微笑みがあった。

「俺と結婚してくれないか」

「え?」

プロポーズともとれるその一言に、奏の頭は真っ白になる。
それとも本当にプロポーズなのだろうか。いや、まさか、そんなはずがない、話をするのも初めてなのに。

けれど戸惑う奏に鷹凪は――

「ちょっと事情があってね。生涯添い遂げることのできるパートナーを探しているんだ」

まるでアルバイトでも募集しているかのようなノリで、軽く言いのける。
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