副社長の一目惚れフィアンセ
「明里…」

吐息混じりに私を呼ぶ声はとても甘く苦しげで、身体は正直にそれに反応する。

「…っナオ…っ」

込み上げてきた何かが弾けるように消え、全てが真っ白になった直後、全身の力がだらりと抜けていく。

「明里、まだ足りない。もっと明里がほしい」

容赦ないナオに、私は本能のままに喘いで、頭が真っ白になって…何度かそれを繰り返し、気づいたらナオの汗ばむ腕に包まれていた。

「ナオ…」

「…ごめん。だいぶ疲れさせちゃったな」

ナオは息を切らしたまま、甘い声を漏らす。

「…今生きてここにいられることが…明里を抱いていられることが、とても幸せだ」

耳をくすぐる声が愛しい。

「…私も、すごく幸せな気持ち。よかった、ナオが生きてて…」




…そう。ナオは生きてここにいる。

私はそれ以上のぞんじゃいけないのかもしれない。

真司さんの計画が頓挫した今、政略結婚の話は必ずまた出てくる。

覚悟をしておかなければならないのだと、ナオの胸に抱かれて思った。


< 182 / 204 >

この作品をシェア

pagetop