副社長の一目惚れフィアンセ
「お前たちも一緒に飲んでいかないか」

「いえ、車で来てますし、デートですから」

社長の言葉にもギクッとしてしまったけど、あっさり断った副社長にもびっくりしてしまった。

だけど社長は機嫌を損ねる様子もなく、しゃっくりをしながら「それは残念だ」とニヤリと笑った。

社長の誘いを断るなんて…しかも理由がデートだなんて、とても無礼なことのはずなのに。

それが許されるということは、やっぱりこの2人は親子なのかと妙に感心してしまった。

社長が酔っていてよかった。

しらふで真面目な顔をして対面ということになっていたら、私は緊張して一言もしゃべれなかったかもしれない。


車に乗った途端に疲れが出て、シートに寄りかかり長いため息を吐いた。

それを見て副社長はクスクスと小さく笑う。

「一応あの人にも罪悪感はあってね。
俺は父親のいない家庭でずっと育ってきたのに、突然父親だと名乗って会社に引っ張り込んだわけだから。
それもあって、結婚に関して俺の意見を聞き入れてくれていたんだ。
最後まで足掻いてよかったよ。まさか君に出会えると思わなかったからね」

前を見て運転しながらだけど、微笑んでいるのはわかる。



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